「絵志野」とは、桃山時代に美濃(現在の岐阜県東濃地方)で生まれた志野焼の一種です。白釉をかけた上に酸化鉄などで絵を描く技法が特徴で、古志野では草花や文様を朱や鉄絵で描いたものが知られています。
魯山人はこの伝統的な志野を研究し、独自の審美眼で現代的に再構築しました。彼の絵志野茶碗は、古志野の柔らかい釉調に、書画的な筆致の絵付けを融合させた作品です。
北大路魯山人「絵志野茶碗」の相場解説

魯山人の絵志野は、志野焼の伝統を現代に蘇らせた功績として美術史的にも高く評価されています。
古典への敬意と、魯山人独自の自由な感性が融合した茶碗であり、「用の美」の象徴的な作品として、国内外の茶人や美術館から注目されています。
区分 | 買取・落札相場 |
---|---|
通常作(共箱あり・状態良好) | 約80万円〜200万円前後 |
名品・展覧会出品歴あり | 200万円〜500万円以上 |
相場の補足
北大路魯山人による「絵志野茶碗」は、同氏の作陶の中でも特に人気の高いカテゴリーです。志野焼特有の柔らかな白釉に加え、魯山人の筆致による絵付けが施されたものは、茶陶コレクターから高い評価を得ています。
市場では、共箱・識箱(魯山人自筆の箱書き)が付属するかどうかで価格が大きく変動します。また、発色が美しいもの、釉溜まりや絵付けに個性が強く出たものは、オークションでプレミアムが付きやすい傾向にあります。
北大路魯山人「絵志野茶碗」の鑑定ポイント
箱書きと印章の確認
魯山人作品の真贋判断では、共箱の有無と箱書きの筆跡が最重要です。本人自筆の「魯山人」署名と印章(「魯」「星岡」など)が一致しているかを確認します。
釉調と絵付けの特徴
魯山人の絵志野は、乳白色の釉薬に柔らかな朱絵で草花や抽象文様を描くものが多く、流れるような筆線が特徴です。釉薬の溜まりや焦げの出方に自然な美があるものが評価されます。
高台・胎土の仕上げ
高台内に鉄釉の焼き色が見られる場合や、成形がやや厚手ながらも端正な仕上がりである点も魯山人作品の特徴です。
箱・添付資料の有無
鑑定書や展覧会図録への掲載歴がある場合は、信頼性が大きく向上します。

魯山人の志野茶碗は贋作も多く、表面の釉調・筆勢の「呼吸感」を見ることが真贋鑑定の鍵になります。
北大路魯山人の歴史と作品の概要
北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん、1883–1959)は、大正から昭和にかけて活躍した芸術家であり、美食家、書家、陶芸家として知られています。彼の作品は「用の美」と「食と器の一体性」を体現しており、日本陶芸史において特異な存在です。
魯山人の陶芸は、志野、織部、黄瀬戸、唐津など多様な古陶を再解釈した独自の美意識によって展開されました。その中でも「絵志野茶碗」は、白釉に赤絵が映える繊細な意匠と、手取りの重厚さを兼ね備えた名品として高く評価されています。
彼の作風は一貫して「自然美と人為の調和」を追求しており、今日でも国内外の美術館やオークションで高値取引が続いています。
買取を検討されている方へ
北大路魯山人の「絵志野茶碗」は、状態や箱書きの有無によって数十万円単位で評価が変わります。ご自宅に保管されている場合は、無理に清掃せず、専門の鑑定士に相談されることをおすすめします。
複数の業者で相見積もりを取ることで、より正確な評価額を把握できます。
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